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多元計算解剖学第5回国際シンポジウムで発表しました

多元計算解剖学第5回国際シンポジウム(The 5th International Symposium on Multidisciplinary Computational Anatomy)で発表しました。(3/4-5, 九州大学)

  • A02-KB107 Analysis of Central Nervous System and Skeletal System During Human Early-fetal Period Based on Multidisciplinary Computational Anatomy -Progress Overview FY 2017-FY2018- (PI:Tetsuya Takakuwa) 日本語

2018年度;修士論文概要

*修士論文発表会は2/8(金) 14:00から杉浦ホールで行われました。

Morphogenesis of the femur at different stages of normal human development
ヒト胎児期初期における大腿骨の形態形成の解析 鈴木裕子

【背景】大腿骨の発生はCarnegie Stage(CS)13頃に始まる。CS17では大腿骨の軟骨化、CS22~23の間には軟骨内骨化が始まる。発生段階における研究は形態形成の肉眼観察、組織学的検討や簡単な計測が主であり、3次元的な形態形成の検討は十分には行われていない。

【対象と方法】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター所有のヒト胚子、胎児期初期標本の立体情報計62例(位相CT;8例、MRI;54例)を対象とした。対象の内訳は、胚子標本がCS18~23、胎児期初期標本が頭殿長(CRL)=37.2~185mmであった。画像情報をもとに大腿骨の立体像を作成し、1)3次元的な形態学的検討、2)位相CT・MR画像を用いた大腿骨内部の分化成長過程(軟骨内骨化過程と軟骨管の形成)の検討、3)形態計測学的検討を行った。形態計測学的検討では、プロクラステス解析、主成分分析も行った。

【結果】1) 形態学的検討:CS18でこん棒状だった大腿骨は、CS20で遠位骨端が顆間窩によって外顆と内顆に隔てられ、近位骨端は大腿骨頭と大転子の形がはっきりし始めた。CS23になると小転子が形成された。胎児期初期では、CRL40mm頃までに大腿骨頭窩が形成され、転子窩もはっきりとした。顆状突起はCRL48mm頃から丸い形状から角を持った形状へと変化していった。

2)大腿骨内部の分化成長過程の検討:大腿骨の骨幹における骨梁の形成はCRL40mmで初めて観察された。骨化が始まると骨幹の中心部は高信号を示し、骨化が進むにつれ低信号を示すようになった。肥大化した軟骨細胞は高信号、骨梁の形成が始まると低信号を示した。骨化は大腿骨の骨幹中心部から両骨端に向かって広がっていった。軟骨管はCRL62mmで近位骨端に、CRL75mmでは遠位骨端で初めて観察された。

3)形態計測学的検討; i) 定量的検討:大腿骨の長さと骨化部分の長さはともにCRLと強い正の相関を示した(R2 = 0.96, 0.95)。捻転角は胎児期初期の間変化し続けたが、頚体角と傾斜度は骨化の開始前後に角度の変化が見られたものの、その後は値が安定していた。捻転角は骨化前から骨化部分の長さが5-10mmになるまで減少し、その後値が増加して24.9°となった。頚体角は骨化開始後に減少し、130°付近に収束した。傾斜度は骨化開始後に増加し、5°付近に収束した。ii) プロクラステス解析、主成分分析では、近位骨端は骨頭のセミランドマークの位置の変化が最も大きかった。近位骨端の第一主成分は骨頭のセミランドマークの変化の影響を受けていた。

【結論】胚子期、胎児期初期の大腿骨立体像を作成し、分化・成長に伴う3次元的な形態学的変化や内部の骨化に伴う画像の変化を定量的に明らかにした。本研究で得られた知見は大腿骨の正常発生の理解を深めるとともに、骨形成不全等の異常個体の解析、診断に応用できる可能性がある。

36. Suzuki Y, Matsubayashi J, Ji X, Yamada S, Yoneyama A, Imai H, Matsuda T, Aoyama T, Takakuwa T Morphogenesis of the femur at different stages of normal human development, PLoS One, 14(8): e0221569. https://doi.org/10.1371/journal. pone.0221569

Myocardial fiber histogenesis during human early fetal period using diffusion tensor magnetic resonance imaging(DT-MRI)
高解像度MRIDTI)を用いたヒト胎児期初期の心筋線維の形成 

西谷早織

【背景】ヒトの心臓発生は、受精後3週頃に前胸部に1本の管状の原始心筒が形成され、心拍が開始する。また、ルーピングと言われる過程を経て2心房2心室が形成され、成人心臓の構造へと発生する。心臓発生を理解するためには、形態解剖に加え、発生の各ステージでの心筋の発生・発達や、心筋の走行を理解することが重要であると考える。近年、MRI等の撮像技術は飛躍的に進歩し、標本を非破壊に保ったまま高解像度の情報を取得することが可能になっている。また、拡散テンソル解析を行うことにより、拡散異方性の程度を定量的に測定し、線維方向を確認することが可能である。現在これらの技術を用い、ヒト成人の左室壁の心筋線維の構造について研究がなされている一方、胎児期初期についての研究は多くはなされていない。ヒトの心臓拍動は胎児期初期から開始しているため、この時期から左心筋は方向性を持つと考えられ、拡散異方性の原理を適応し心筋走行の解析が可能であると考えた。そこで今回は、ヒト胎児標本のT1強調画像と拡散強調画像(DWI)を撮像し、得られた画像を基に胎児期初期における形態学的観察と左室の心筋線維の構造を明らかにすることとした。

【対象と方法】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センターが保有するヒト胎児標本計15例を対象とした。うち6例は胎児から摘出した心臓、9例は胎児中にある心臓を解析に用いた。高解像度MRI撮像を行って取得したMR画像をもとに心臓部分の立体化をして再構築を行い、形態学的特徴を観察した。また、DWデータをもとにHelix angle (HA) と呼ばれる心筋線維の方向性を評価する指標として用いられる値を計測し、心筋線維が心臓横断面となす角度が内膜側から外膜側にかけて如何に変化するかを観察した。

【結果】取得したMR画像では、左右の内腔を確認することができ、左室壁と中隔の厚みはほぼ均一であることがわかった。また、MR画像をもとに心臓部分の立体化を行うことで解剖学的特徴を再現することができた。さらに、Helix angle (HA) を計測すると、左室の内膜側から外膜側にかけてプラスの値からマイナスの値へ滑らかに変化する様子が観察でき、その傾向はCRL 23 mmの小さな標本においても観察された。このHelix angle (HA) の最大値と最小値を計測してその差を算出することで、内膜側と外膜側の心筋線維がなす角度を計測した。この角度はCRLの増加に伴って増加することが前壁と中隔において示され、胎児期において心筋線維の構造が徐々に成人心臓の構造へと変化していく様子が示唆された。

【結論】本研究では、高解像度MRIを用いることで、ヒト胎児期初期の胎児中にある心臓のMR画像を取得することをも可能にし、その画像を用いて三次元立体像を再構築することで形態学的特徴の変化を評価することができた。また、心筋線維が心臓横断面となす角度が内膜側から外膜側にかけて滑らかに変化することが、先行研究で示されているよりも若い時期の胎児において示されたことは本研究における最も新規的な部分であると言える。この滑らかな変化が出来始めるのはより若いステージであると考えられるため、今後、より発生時期の若い心臓についてのMR画像を取得することに成功すれば、ヒト心臓の発生についてより詳細に解明できると期待される。

46. Nishitani S, Torii N, Imai H, Haraguchi R, Yamada S, Takakuwa T, Development of helical myofiber tracts in the human fetal heart: Analysis of myocardial fiber formation in the left ventricle from the late human embryonic period using diffusion tensor magnetic resonance imaging. Journal of the American Heart Association, 2020, 19(9), e016422, doi:10.1161/JAHA.120.016422

第72回日本人類学会で発表

共同研究者の山口豊さんが第72回日本人類学会(2018/10/19-22、三島)で発表しました。若手会員大会発表賞をいただいたそうです。おめでとうございます

幾何学的形態測定学法を用いたヒト胎児脳の成長過程の解析

山口豊、勝部元紀、上部千賀子、巻島美幸、山本憲、今井宏彦、高桑徹也、富樫かおり、山田重人

石山さんの修論がPLoS Oneに掲載

石山さんの修論がPLOS ONEに受諾、掲載されました。ヒト腎臓(後腎)における尿集合管系の形成過程を明らかにし実験動物(マウス)との差異を論じました。

  • 最初の 尿路樹の分岐は CS16 で発生、CS23の最大分岐次数は12に達する、
  • 二分分岐が急速に発生し、その後ネフロンの形成が続き、CS23において末端枝数あたりの糸球体数は1.34
  • 腎盂拡張はCS23内でみられる
  • 分岐次数は極部で高い

34. Ishiyama H, Ishikawa A, Kitazawa H, Fujii S, Matsubayashi J, Yamada S, Takakuwa T, Branching morphogenesis of the urinary collecting system in the human embryonic metanephros, PLoS ONE 13(9): e0203623. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0203623

Abstract

An elaborate system of ducts collects urine from all nephrons, and this structure is known as the urinary collecting system (UCS). This study focused on how the UCS is formed during human embryogenesis. Fifty human embryos between the Carnegie stage (CS) 14 and CS23 were selected from the Kyoto Collection at the Congenital Anomaly Research Center of Kyoto University, Japan. Metanephroses, including the UCS, were segmented on serial digital virtual histological sections. Three-dimensional images were computationally reconstructed for morphological and quantitative analyses. A CS timeline was plotted. It consisted of the 3-D structural morphogenesis of UCS and quantification of the total amount of end-branching, average and maximum numbers of generations, deviation in the metanephros, differentiation of the urothelial epithelium in the renal pelvis, and timing of the rapid expansion of the renal pelvis. The first UCS branching generation occurred by CS16. The average branching generation reached a maximum of 8.74 ± 1.60 and was already the twelfth in CS23. The total end-branching number squared between the start and the end of the embryonic period. UCS would reach the fifteenth branching generation soon after CS23. The number of nephrons per UCS end-branch was low (0.21 ± 0.14 at CS19, 1.34 ± 0.49 at CS23), indicating that the bifid branching occurred rapidly and that the formation of nephrons followed after. The renal pelvis expanded mainly in CS23, which was earlier than that reported in a previous study. The number of nephrons connected to the UCS in the expanded group (246.0 ± 13.2) was significantly larger than that of the pre-expanded group (130.8 ± 80.1) (P < 0.05). The urothelial epithelium differentiated from the zeroth to the third generations at CS23. Differentiation may have continued up until the tenth generation to allow for renal pelvis expansion. The branching speed was not uniform. There were significantly more branching generations in the polar- than in the interpolar regions (P < 0.05). Branching speed reflects the growth orientation required to form the metanephros. Further study will be necessary to understand the renal pelvis expansion mechanism in CS23. Our CS-based timeline enabled us to map UCS formation and predict functional renal capacity after differentiation and growth.

Blechschmidt collection デジタルアトラス作成の論文がCongenit Anomに掲載

Blechschmidt collectionスキャンプロジェクトについての論文がCongenital anomaliesに掲載されました。先天異常標本解析センター、ドイツ・ゲッティンゲン大学解剖学教室との共同プロジェクトです。

(ゲッティンゲン大学ヒト胚子コレクションの組織学的解析およびデジタルアトラス作成;基盤(B)(海外 )2015-2017)

  • Blechschmidt コレクションの組織標本を、市販のフラットベッド スキャナーを使用して4800 dpiの解像度画像にデジタル化
  • CRL64mm, CRL17.5mm (CS20) の2 つの標本について、最新の技術を使用して、立体再構成

⑦ Miyazaki R, Makishima H, Männer J, Sydow HG, Uwabe C, Takakuwa T, Viebahn C, Yamada S. The Blechschmidt Collection: revisiting specimens from a historical collection of serially sectioned human embryos and fetuses using modern imaging techniques, Congenit Anom, 2018, 58, 152-157, doi: 10.1111/cga.12261

ABSTRACT

Along with the Carnegie Collection in the United States and the Kyoto Collection in Japan, the Blechschmidt Collection (Georg-August-University of Göttingen, Germany) is a major historical human embryo and fetus collection. These collections are of enormous value to human embryology; however, due to the nature of the historical histological specimens, some stains are fading in color, and some glass slides are deteriorating over time. To protect these specimens against such degradation and ensure their future usefulness, we tried to apply modern image scanning and computational reconstruction. Samples of histological specimens of the Blechschmidt Collection were digitized into images using commercial flatbed scanners with a resolution of 4800 pixels per inch. Two specimens were reconstructed into three-dimensional (3D) images by using modern techniques to vertically stack two-dimensional images of the slices into 3D blocks. The larger specimen of crown-rump length (CRL) 64.0 mm, a series of very large histological sections in human embryology, was reconstructed clearly, with its central nervous system segmented before stacking. The smaller specimen of CRL 17.5 mm was also reconstructed into 3D images. The outer surface of the embryo was intact, and its development was classified according to the widely used Carnegie stages (CSs). The CS of the specimen was identified as the later half of CS 20. The invaluable Blechschmidt Collection can be revisited for further research with modern techniques such as digital image scanning and computational 3D reconstruction.

病院などで臨床検査技師として働いている方の受験について

人間健康科学系専攻は、医療職の分野に貢献することが重要な使命の一つになっています。そのため、同分野で働いている方々が大学院に入学しやすいようないくつかの制度があります。

■ 修士課程

社会人特別選抜制度:入学時で3年以上(但し、看護科学コースの 志願者は5年以上)の志望分野に関連する医療実務経験を有する者については、申請時の手続きにより、試験の配点が変更できます。(2023年度入試より配点が変更になっています)

一 般 選 抜: 外国語(英語)100点、専門100点 、社会人特別選抜: 外国語(英語)100 点、専門 200 点

■ 博士課程

修士学位を取得していなくても、卒後の経歴(おもに研究活動)の内容によっては受験が可能になることがあります。(資格審査があります)

仕事をやめなくても博士課程に入学 できる可能性があります。

ご興味のある方は御連絡ください。

医学研究科HP内の案内ページ>>(外部リンク)

 

古市さんの卒論がAnat Recに掲載

古市さんの卒論がAnat Recに掲載されました。

連続組織切片の 3-D 再構成を行い、胚子期末のWillis 輪( CW )の形成を検討しました。

  • CW は胚子期末のすべての標本で閉鎖、
  • CWは単一の平面でなく、複数の階段状の平面で構成
  • 中脳と間脳の屈曲を反映してCW は尾部で急激に湾曲
  • 85%(17/20)でvariation観察
  • (anterior partのみ10例、anterior+posterior 6例、posteriorのみ1例)
  • 観察されたvariationは、胎児、新生児、成人で報告されているものと同様
  • CWのvariationが開始時期から存在することを示唆

33. Furuichi K, Ishikawa A, Uwabe C, Makishima H, Yamada S, Takakuwa T,
Variations of the circle of Willis at the end of the human embryonic period,  2018, 301, 1312-1319, doi:10.1002/ar.23794

ABSTRACT

Variations of the circle of Willis (CW) influence blood supply to the brain and adjacent structures in adults. We examined the formation of the CW in 20 human embryo samples at the end of the embryonic period using 3-D reconstructions of serial histological sections. The CW was closed in all samples, and did not form in a single plane, but was composed of multiple stair-like planes. The artery acutely curved at the caudal part of the CW, namely, at the inlet of the basilar artery and bifurcation of the P1 segment of the posterior cerebral artery (PCA), reflecting flexure of the mesencephalon and diencephalon at this stage. Variations were observed in 17 of 20 samples—only anterior parts (anterior communicating artery [Acom] and anterior cerebral artery [ACA]) in 10 samples, only posterior parts (posterior communicating artery [Pcom]) in one sample, and both anterior and posterior parts in six samples. Variations included the Acom formed as partially duplicated in three samples, duplicated in four, plexiform in three, and no channel as a result of a single azygos ACA in one. The ACA formed as duplicated in two, median ACA in two, and right hypoplasia in one. The Pcom formed in hypoplasia of either side in six samples. Variations observed in this study are similar to those observed in fetuses, neonates, and adults. The P1 segment of PCA was very large in all samples. The present observations indicate that variations in the CW are present from the initiation of CW formation.

第58回日本先天異常学会で発表しました

第58回日本先天異常学会で発表しました(7/27−7/29, 東京)

台風も近づき慌ただしい学会でした。

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奨励賞受賞講演
・金橋 徹、山田 重人、田中 美玲、廣瀬あゆみ、上部千賀子、巨瀬 勝美、米山 明男、武田 徹、高桑 徹也 
:大規模コレクションから潜在的な異常例を明らかにする新手法