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第50回先天異常学会で発表しました

第50回先天異常学会(2010,7,8-10,淡路島 兵庫)で発表しました.

ヒト胚子MR画像からの3次元立体像の作成; 高桑徹也他

ヒト胚子の形態発生に関する三次元データベースを用いた肝臓発生の解析;廣瀬あゆみ他

ヒト胚子の形態発生に関する三次元データベースを用いた神経管発生の解析;中島 崇 他

第50回先天異常学会(2010,7,8-10,淡路島 兵庫)で発表しました. poster

病理学の勉強について

A.ロビンスについて

今年(2008年度)、私は「ロビンス基礎病理学」を病理学総論、各論に指定しました。講義が終了して、「教科書」に内容が沿っていないという抗議を少なからず受け、大変驚き、また少々反省も致しました。というのは、私が学生のころの医学生の常識の一つとして、「「教科書」を、いわれるままに買ってはいけない。実際によくみて、情報を集めて、必要なら先輩からもらえ、ただし、先輩がくれる教科書はろくな教科書ではない」というものがあったからです。実際、医学生が、教科書として推薦されているものを全部そろえると年間で数十万円になってしまうこともあります。いわれるままに買っていては大変です。私は、学生時代貧乏で、勉強意欲もたいしたことなかったので、教科書はほとんど買いませんでした。
ロビンスには[Pathologic basis of the disease]というさらに厚い原著があり、そこから要点を抜粋したものがBasic Pathology、そして、その日本語訳が「ロビンス基礎病理学」です。ロビンスはいい教科書です。病気がどういう機序でおきるのかという点に力点をおいた病理学の教科書は、残念ながら、他にお薦めできるものがありません。多くの医学部で、ロビンスは教科書として取り上げられています。翻訳を嫌い、原書を教科書にしている大学もあるくらいです。病気の成り立ちという面、病理形態学的面と、分けて記載している点も良い点です。日本人が著者になっている病理学の本では、病気の機序についての説明が不明解であること、内容が組織形態、診断に偏っていることなど、いくつか問題点があります。ということで、教科書は何がよいかと聞かれたら、私は「可能であれば、原著でかつ[Pathologic basis of the disease]を読むのがよいです。」と答えます。

B. 通読できる「病理学」教科書を一通り読む。

しかし、実際には「病理学」は単位をとることが第1目標で、内容が面白く、将来役にたてば、なお結構という人が殆どでしょう。そういう学生さんには、分量、値段、内容、どれをとってもロビンスは不適当です。読まない本を買うことほど無駄なことはありません。
通読できる「病理学」教科書を一通り読み、病理学というものがどういうことを対象にしているか、その概観を押さえるのにいいでしょう。看護学生をおもに対象にした教科書[1-3]は、値段も手頃で、図もきれいで、説明もまとまっています。わかりにくい臓器の肉眼像、顕微鏡像には模式図が添えてあったり、興味ある記事はコラムにおさめたり、キーワードを巻末に並べたり,簡単な問題がついていたりして、勉強をしやすいように工夫されています。
これらは、病理学の各論が弱いという欠点があります。 [4-7]は、その点は、よりよいと思います。ただ、値段を下げる必要からか写真の質が悪いものが多いので、病理画像に興味がある人には、不満が残るでしょう。
書店で手に取ってみて、読みきれると思ったら購入してもよいでしょう。図書室にも何冊か所蔵されています。

病理学参考書

1. カラーで学べる病理学 Nouvelle Hirokawa
2. 疾病のなりたちと回復の促進「1」病理学 医学書院
3. 疾病のなりたちと回復の促進「6」病理学 金原出版
4. 新クイックマスター病理学 医学芸術社
5. シンプル病理学 南光堂
6. エッセンシャル病理学 医歯薬出版
7. 絵説Dr.レイの病理学講義 金芳堂
8.図解ワンポイントシリーズ3 病理学 医学芸術社
9.イラストとエッセンスわかる病理学 恒心社出版
10.はじめの一歩のイラスト病理学 羊土社
11.なるほど、なっとく、病理学 南山堂
12.集中講義 病理学 Medical VIEW

C.病気についての知識を増やす勉強

現代社会においては、一部の人を除くと、若者が病気と向き合ったり、本質的な死の恐怖や逆に健康のありがたみみたいなものを、実感する機会は極めて低くなっています。みなさんのほとんどは、若くて健康で、病院や病気には縁遠い生活をこれまで送ってこられたのではないでしょうか。そういった学生にいきなり「病気の本質とは」と始めてもついていけないかもしれません。これは「臨床医学」関連の内科、外科講義についても同じで、いきなり講義で病気の話を始めても、それがどれくらい伝わるかは疑問です。
みなさんが病気についての知識がもう少し増えると、病理学をふくめた病気に関する講義は、格段に面白くなるであろうと思います。そこで、病気についての勉強を楽に始められる本をいくつか取り上げます。

13.学生のための疾病論 人間が病気になること 医学書院
病気を個人のストーリーとして語り、その後に要点の解説を加えるという形式をとっています。文学的にはさほどすぐれた文章ではありませんが、病気の理解には役立ちます。また、病気は個人の生活、人生と、切り離せないものであるということも朧げにわかるでしょう。みなさんが将来対象とする病気とは、そういった残酷な面を持ちます。人間健康科学科の図書室に何冊かありますので、病理学など専門基礎の講義が始まる前に、借りて読むのもよいかもしれません。

14.完全病理学 各論 Element版 学際企画
1ページに1疾患、計200症例の説明と病理画像、そしてとその解説が加えられています。病理画像にシェーマをつけ加えることで、画像における個々の要素の読み取りが容易となり、病理画像の面白さを引き出すように工夫されています。非常によく出来た本であると思います。たまに散文がみられること、写真が小さめであるのが残念です。

15.病気が見えるVol 1-10 Medic Media
これらは、書店では国家試験対策書として置かれてあることが多い本です。「病気が見える」は、内科、婦人科の国家試験必出疾患症状、病態、検査法、治療などを、わかりやすい図表、イラストでまとめたものです。病気についてのessentialな知識を得られる、わかりやすい、覚えやすいと、試験対策書の要素を満たしている。また、病態など、病理学で扱う内容も含まれている。内容も比較的詳しく侮れません。病院で働きだしてからも役に立つでしょう。

16.Visual note  Medic Media
上記「病気が見える」をさらに受験、暗記用に特化したもの。強烈なイラスト、語呂合わせなど、賛否が分かれる本であると思います。私のような立場のものが、この本を薦めることは、よくないかもしれませんが、病気の知識を増やすという観点から取り上げます。受験生の評判はよいようです。

17.ビジュアルブックシリーズ 学研

15.病気が見えるに対抗して出されたシリーズです。両者が競い合ってより分かりやすいものにしてほしいと思います。

2009年度;修士論文(金谷、丸山)

癌Hras1遺伝子はSL/Khマウスにおいてリンパ腫発症時にみられる
レトロウイルス挿入好発部位のひとつである 金谷和哉

SL/Khマウスはproto-SL、AKRをprogenitorとする近交系マウスで、90%以上が6カ月齢以内にpre-Bリンパ腫を自然発症する。このマウスは遺伝的に内在性マウス白血病レトロウイルスのひとつであるAKV-1の挿入を獲得している。SL/Khマウスにおけるリンパ腫発症において、プロウイルス由来のレトロウイルスが宿主ゲノム内へと後天的に再挿入することに起因した癌遺伝子活性化の可能性を考え、pre-Bリンパ腫を発症したSL/Khマウス個体の
リンパ腫組織由来のgenomic DNAを用い、Inverse PCR法によりAKV-1の挿入部位の同定を試みた。AKV-1の挿入好発部位としてはこれまでStat5aEvi3c-mycN-mycStat5bなどが同定されているが、今回新たにマウス第7染色体上の癌遺伝子Hras1のexon1およびintron1領域が挿入好発部位であることが明らかになった。挿入部位は近接する3か所に限定されており、同部位へのAKV-1挿入はリンパ腫を発症したSL/Khマウス130個体中7個体(5.4%)で認められた。挿入部位はHras1遺伝子のタンパク翻訳領域の上流に位置しており、翻訳されるタンパクは欠損や変異のない機能的なタンパクであると考えられる。AKV-1挿入ありの個体においてHras1遺伝子および融合遺伝子の発現の有無を検討したところ、検討したすべての個体でHras1遺伝子の発現が認められ、AKV-1のプロモーターによる発現であることがわかった。AKV-1とマウスの融合遺伝子は検討した4個体中2個体でHras1遺伝子のintron1領域の一部がスプライシングされたmRNAの発現が認められた。スプライシング部位はAKV-1挿入部位によらず共通していた。Hras1遺伝子へのAKV-1の挿入によるマウス宿主への影響を評価するため、AKV-1挿入ありの個体と挿入なしの個体を用いてHras1遺伝子およびHras1タンパクの発現量を検討した。遺伝子およびタンパクの発現量はAKV-1挿入ありの個体で高く、タンパク発現の上昇は有意であった(P=0.0038)。癌遺伝子Hras1のタンパク発現の上昇が、リンパ腫を発症したSL/Khマウスにおいてその発癌の機序に何らかの関連性があるのではないかと考えられる。

B-lymphoblastic lymphoma(B-LBL)を自然発症するSL/Khマウスにおける内因性レトロウイルスの特定 丸山泰弘

SL/Khマウスはproto-SL、AKRをprogenitorとする近交系マウスで、生後約半年でその個体の90%以上がB細胞芽球型リンパ腫を自然発症する。これまでのサザンブロット(SB)解析で、このマウスは遺伝的に少なくとも7カ所への内在性マウス白血病レトロウイルス(MuLV)の挿入を獲得していると推察されている。このMuLVの挿入部位を特定し、その挿入が近傍遺伝子に影響を与えているか、それがリンパ腫の発症と関連があるかどうかを検討するために今回の研究を行った。

マウスgenomeを制限酵素で切断し、セルフライゲーション後、インバースPCR法を用いて挿入部の増幅を行った。得られたPCR産物を用いてダイレクトシーケンスを行い、データベースと比較検討した。その結果、以下の4か所の挿入部位が特定できた。

a:染色体2H2上で、挿入部位からセントロメア側に10761 baseのところに遺伝子、Commd7が存在した。Commd7全長約14Kbpで7個のExonを持つ遺伝子である。COMM domainはNF-κBの規制と、銅代謝の調整を行っているMURR1と相同性がある。

b:染色体15F1上で、挿入部位からテロメア側に5646 baseのところに遺伝子、olfr234が存在した。olfr234は全長522bpの遺伝子であり、臭いの感知に関係する受容体をコードしている。

c:染色体7A1上で、遺伝子Gltscr1の第5イントロン領域にMuLVの挿入部位が存在した。Gltscr1は全長28Kbpで14個のExonを持つ遺伝子で、乏突起膠腫の発症に関係しているが、詳しい機能はよくわかっていない。ヒトでは脳、肝臓など主要臓器に発現していることが報告されている。

d:染色体1A5上で挿入部位からテロメア側に42718 baseのところに遺伝子、Smap1が存在した。Smap1は全長75Kbpで10個のExonを持つ遺伝子である。骨髄のstromal細胞の表面分子をコードしており、赤血球産生に関係していると考えられている。

これらのうちGltscr1は遺伝子内にMuLVの挿入部位が認められたことから、MuLV挿入がGltscr1の発現に影響を及ぼしているかどうかを検討した。RT-PCR法を用いた定性的検討ではBALB/cマウスの脳、腎臓、肝臓、脾臓で遺伝子の発現が認められた。SL/Khマウスの脳、脾臓でも同様に発現が認められた。このことから、マウスにおいてもGltscr1は主要臓器でヒトと同様に発現していると考えられた。

次に、Gltscr1の発現をMuLV挿入部位の5’側(上流)、3’側(下流)に分けて定量的に検討した。上流では、BALB/cマウスの脾臓、SL/Khマウスの脳、脾臓、リンパ腫で発現が検出できたものの、BALB/cの脳では発現が検出できなかった。下流ではSL/Khマウスのリンパ腫で微弱な検出ができたものの、検討した他のsampleでは検出できなかった。コントロールとして用いたBALB/cマウスでの発現が検出できなかったので、MuLV挿入による影響を判断するには至らなかった。

Gltscr1内へのMuLV挿入がリンパ腫の発症と関係するかどうかは引き続き検討する必要があると考えられた。

細胞治療を担う医療人の育成 -細胞育成士養成プロジェクト-

細胞治療とは、ヒトの細胞を輸注、移植することによって行う治療法の総称であり、従来から行われている輸血治療を原型とし、造血器幹細胞移植、細胞移入免疫療法、遺伝子治療、再生医療などがこれに含まれます。こういった細胞をもちいる治療法の開発には従来の医薬品とは異なり細胞プロセッシングというヒト細胞の調製、培養、加工の行程が必要です。京都大学医学部附属病院では、品質が保証された細胞を供給し、探索的臨床試験研究の安全性と信頼性を高める必要性を予見し分子細胞治療センター(CTCC)を平成14年に開設しています。

この分野は今後、急速な拡大が見込めると思われます。例えば、本邦における幹細胞移植治療ヒト幹細胞指針によって認可されたものは現在7件ですが、潜在的には上記の届け出を行っていないものを含めるともっと多数あり、今後幹細胞移植は、今後増えると予想されます。そして、京都大学は間違いなくその中心的存在であります。

細胞治療を一般的医療に近づけるためには、1.細胞治療を実施する専門的知識をもった人材の養成、2.新たな医療機器の開発、3.安全性、有効性を評価する応用研究等、多方面でのアプローチが必要です。

われわれが描く「細胞育成士」は、細胞治療に使用する細胞の育成、管理が基本にありますが、単に細胞が培養できるというだけでなく、1.細胞治療の基礎知識、2.CPCの運営管理の考え方の理解と実践、3.安全な細胞の育成、調製法の理解と実践、さらには、4.細胞治療研究に必要な基礎技術の修得、5.細胞治療研究の実際といった、幅広い能力を有する人材であることを想定しています。

当プロジェクトでは将来の細胞治療を支えるべく、このような幅広い能力を持つ人材の育成を目指しています。

プロジェクト計画

●1年目ー入門編

講義、講演会による、知識の習得と啓蒙活動

細胞治療とは、細胞治療センターとは、その役割、法令

細胞治療の実際

学科内の修士学生、学部学生を対象に半期(13回)の講義、また全8回の公開講演会を行いました。細胞治療に実際に携わっている附属病院、細胞治療センターの多くの先生方の協力を頂きました。公開講演会は毎回30名以上の学生、教員が参加しています。

<細胞治療の最先端とそれを支える細胞治療センターの役割>ポスター.pdf

● 2年目ー応用編

細胞培養の実習、細胞品質検査管理実習、附属病院分子細胞治療センター, iPS細胞研究センターにおいて実習を行う。

● 3年目

細胞治療の研究チームに実際に入り、細胞培養の実際に携わったり研究を進める。

「細胞育成士」の学会での認定資格化をめざします。

 

本プロジェクトは、人間健康科学科の他、京大病院細胞治療センター、京大病院診療科の教職員の参加協力により成り立っています。

今後は、iPSセンターや関連企業とも連携して行く予定です。

将来の活躍が期待される分野

大学病院などの細胞治療センター、細胞治療に関わる企業、細胞バンク、行政(医薬品医療機器総合機構PMDAなど)などが挙げられます。

当プロジェクトは平成21年度厚生労働科学研究費補助金、医療技術実用化総合研究) 「再生医療実用化を促進するセルプロ セシングセンター運用のための人材育成プロジェクト」(平成21年度〜23年度)(代表 前川平)に採択されました。

細胞治療を担う医療人の育成 -細胞育成士養成プロジェクト-(産学連携シンポジウムポスターpdf)

 

産学連携シンポジウム

産学連携シンポジウム(12/25、人間健康科学科)でポスター発表をしました。
細胞治療を担う医療人の育成 -細胞育成士養成プロジェクト-

ヒト胚子MR画像からの3次元立体像の作成

第68回日本癌学会で発表しました

第68回日本癌学会(10/1-3)でポスター発表しました。

甲状腺リンパ腫におけるASHMの検討;高桑徹也

日本臨床細胞学会近畿連合会学術集会で発表しました

■ 第35回日本臨床細胞学会近畿連合会学術集会 (2009.9.20, 京都大学)

高桑徹也 パネルディスカッション 「近畿圏の細胞検査士養成の現状と将来計画」

京都大学大学院での細胞検査士養成プログラムについて紹介しました。
パネリスト間での討議時間がなく、少し物足りなく感じました。

第6回日本病理学会カンファレンスで発表しました

第6回日本病理学会カンファレンス(7/31,8/1つくば)で修士2年の丸山君、金谷君が発表しました。
B-lymphoblastic lymphoma(B-LBL)を自然発症するSL/Khマウスにおける内因性レトロウイルスの特定;丸山泰弘 他
SL/Khマウスにおけるプロウイルス挿入に伴う癌遺伝子Hras1の発現異常の解析;金谷和哉 他