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藤井さんの博士審査会が行われました。

藤井さんの博士審査会が行われました。(8/5(水)10:00- 高井ホール)

The bronchial tree of the human embryo: an analysis of
variations in the bronchial segments

(ヒト胚子期の気管支樹:区域気管支の多様性の検討)

気管支の中枢部分は葉気管支と区域気管支から成るが、多くの成人肺の解剖学的研究においてこの典型的な構造から逸脱した多様な分岐構造が報告されている。これまでに気管支の多様性が生じる過程を明らかにした研究はない。本研究は、Carnegie stage (CS) 15〜23のヒト胚子標本の位相CT画像を用いて作成した気管支樹の三次元立体像に解析を加えることで、胚子期における気管支の多様性を検討した。形態観察および区域気管支までの同定をおこない、各葉の分岐次数を算出した。CS15からCS16の観察結果より、右上葉は右中葉と左上葉に遅れて形成することが示された。CS17~19において、区域気管支と亜区域気管支が、同一ステージの個体間で形成の程度にばらつきを示しながら形成していた。分岐次数は各葉にてCSの進行とともに増加した。右中葉の分岐次数の中央値は他の4葉と比較して有意に低かった。CS20~23の気管支樹における区域気管支について、全5葉にて14種類の形態を同定した。本研究にて同定した形態は、すべて成人の気管支にて報告のある形態に含まれていた。よって、区域気管支の多様な構造は胚子期に決定する可能性が示唆された。本研究は、詳細な形態変化情報と正確な分岐次数を算出することにより、これまで明らかでなかった胚子期の気管支形成について新たな知見を与えたものと考える。

 

博士号を取得して

寄稿の機会をいただきありがとうございます。2017年に京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻へ社会人博士として入学し、2020年11月に博士号を取得することができました。ここでは個人的に印象深かった出来事を著し、博士号取得の挨拶に代えさせていただきます。

初めて科学雑誌に論文を投稿したのは2019年11月、査読の返答は12月の終わり頃に届きました。査読者のコメントにより投稿内容のおよそ半分を入れ替えることとなり、査読へ対応するための原稿の修正、後輩の修士論文執筆に向けた解析の支援と、その年の年末年始は博士課程在学中でも特に充実した時間であったと記憶しています。修正原稿の投稿から約ひと月後の早朝、指導教員の簡潔な2行ほどのメールにより、受諾の知らせが届きました。簡潔な内容に驚きつつ、顔を合わせた際にはどんなありがたいお言葉をいただけるのだろうと、淡い期待を胸に、底冷え残る京都の朝、研究室へ向かいました。しかし、教授は学位申請の手続きを早めに行うよう勧めたのち、受諾論文では省いたデータを改めて論文にまとめる話を切り出されました。このとき、職業研究者というものを多少なりとも理解したように思います。

当時省いたデータは、査読にて指摘を受けた部分を補強する解析を行ってまとめ直し、こちらも論文として受諾されました。そして、現在は次の解析へと目を向けています。最後に、このように博士課程で得た成果を論文として投稿することができたのは、指導教員ならびに共同研究者の皆様のご尽力の賜物であります。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

Fujii S, Muranaka T, Matsubayash J, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. The bronchial tree of the human embryo: an analysis of variations in the bronchial segments. J Anatomy 2020, 237, 311-322. doi: 10.1111/joa.13199.

Matsubayashi J, Okuno K, Fuji S, Ishizu K, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Human embryonic ribs all progress through common morphological forms irrespective of their position on the axis, Dev Dyn 2019, 248, 1257-1263, doi: 10.1002/dvdy.107

Okuno K, Ishizu K, Matsubayashi J, Fujii S, Sakamoto R, Ishikawa A, Yamada S, Yoneyama A, Takakuwa T. Rib cage morphogenesis in the human embryo: A detailed three-dimensional analysis. Anat Rec 2019, 302, 2211-2223, doi: 10.1002/ar.24226

Ishiyama H, Ishikawa A, Kitazawa H, Fujii S, Matsubayashi J, Yamada S, Takakuwa T, Branching morphogenesis of the urinary collecting system in the human embryonic metanephros, PLoS ONE 13(9): e0203623. doi: 10.1371/journal.pone.0203623