呼吸器系形成のはじまり(肺芽の形成)
発生約4週(Carnegie stage[CS]12)ごろ、前腸の内胚葉が腹側へ膨出し、呼吸器憩室が形成される1,2(図1)。呼吸器憩室は左右に分岐し、気管に分化する幹部分と、肺の原基である一次気管支芽(肺芽)を形成する3。
気管支の発生
1) ヒトの肺の発生段階は5つであり肺芽期、腺様期、管状期、嚢状期、肺胞期に分類される15)。
(1)肺芽期(lung bud period)
胎生約4週(CS12)に呼吸器系の原基である呼吸器憩室(respiratory diverticulum)が前腸から前方に発生する8,19,21)。憩室が尾側に拡張すると食道気管稜が発生し、前腸から分離される。その後、これらの稜が癒合して食道気管中隔を形成し、前腸は背側の食道と腹側の気管および胚芽(lung bud)に分割される19)。胚芽は分岐し左右の一次気管支芽(primary bronchial bud)を形成する13)。これにより左右の肺が形成される。その後再び分岐し第二気管支芽(secondary bronchial bud)が形成され、これが将来の肺葉(lung lobe)の原基となる19)。肺葉は右肺3葉、左肺2葉で構成され、主気管支(main bronchi)と呼ばれる11)。さらに分岐すると肺区域(bronchopulmonary segment)の原基が形成される2)。区域気管支は右肺10個、左肺8個で構成される10,11,19)。
(2)腺様期(pseudoglandular period)
肺区域ができた後、さらに約14回分岐し終末細気管支(terminal bronchiole)を形成する。これは発生第16週頃までに行われるとされている15,19)。
(3)管状期(canalicular period)
終末細気管支がそれぞれ2本以上の呼吸細気管支(respiratory bronchiole)に分岐する。この時期に呼吸に関する血管が発生し始める。この間に血管は肺の上皮に近接するようになる。肺の上皮は細気管支の近位部では線毛細胞や分泌細胞、神経内分泌細胞に分化し、遠位部ではⅡ型肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell, type Ⅱ)とⅠ型肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell, type Ⅰ)の前駆細胞が分化し始める19)。これは発生第27週頃までに行われる15)。
(4)嚢状期(saccular period)
呼吸細気管支はさらに分岐し、終末嚢(terminal sac)を形成する13)。終末嚢は毛細血管と毛細リンパ管を含んでおり、この時期に呼吸細気管支の立方上皮細胞の一部が扁平上皮細胞になり呼吸できるようになる。終末嚢は胎生期の最後の2カ月中と生後の数年間に増加する20)。
(5)肺胞期(alveolar period)
発生約36週頃から肺胞が成熟し、新しい肺胞の形成は少なくとも生後、最初の数年間は続く15,16)。