顕微鏡というと普通思い浮かべるのは、光学レンズを用いて組織標本をみる“光学顕微鏡”だと思いますが、MR(磁気共鳴)の原理を利用して、より高解像度の像を得るのがMR顕微鏡です。まず、MRimageとは、体の内部などを、磁場の中で起こる電磁波(場)との共鳴現象(NMR)により可視化する手法です。1980 年代の半ば頃から実用化された医学診断装置で、人体各部の断層像や三次元画像が取得できます。放射線被爆がなく、さまざまな生体情報が得られるため現在では病院で広く診断目的に使われています。MR顕微鏡の長所は、胚子を全く傷つけることなく、得られたデジタルデータを用いて、任意の断層面を観察、三次元的な内部構造の抽出や再構成ができることなどがあります。私たちの研究室では、3つのMR撮像データ群を用いて研究を行っています。
1.CS13-CS23に相当する約1200体の胚子立体像 (Kyoto Human Embryo Visualization Project)
2.34T超伝導磁石を用いたMR顕微鏡を用いて、筑波大学の磁気共鳴イメージング研究室と共同で撮像されました。 画素サイズ、40〜150ミクロン立方、画像マトリクスサイズは、128x128x256の拡大像が得られました。胚子1体当り8時間かかりました。「京都コレクション」を用いて行われたヒト胚子約1200例の撮像は、約22ヶ月間にわたって昼夜機械を作動させて行われたそうです。
2.CS22から胎児期初期 (頭殿長-90mm位)(Post-embryonic stage Visualizing Project)
今井宏彦博士(情報学研究科システム科学専攻医用工学分野)の協力を得て現在撮像中です。7TのMRM (BioSpec 70/20 USR, Bruker Biospin MRI Gmbh, Ettlingen, Germany) with a 1H quadrature transmit-receive volume coil of 35 mm, 72 mm in diameter (T9988, Bruker Biospin)を用いています。また、独自に19mm, 75mmコイル等も開発して応用しています。拡散テンソルイメージング(DTI)撮像も行っています。
3. 胎児期初期から中期(頭殿長 100mm以上)
岡田知久博士(脳機能総合研究センター)の協力を得て臨床用7T MRI (Megatom Siemens)をを用いてT2強調像を撮像しています。