ヒトの形態形成の ’見える化’
- 最新の高解像度MRI, CT等を用いて高品質の胚子胎児を大量に撮像し’見える化’を行い、研究対象として展開し、従来の知見に対して再検討を加えた。
- ヒト胚子胎児のイメージングを用いたアプローチは、古典的なヒト形態形成学では成し得なかったことを可能にし、ヒト形態形成の世界を広げた。
われられの研究成果について、下記A-Eに整理しました。数字は原著論文の通し番号を示す
A ヒト発生学の教科書に記載されている知見の’見える化’
1形態形成中の諸器官の“うごき”、“成長“の定量化
形態形成時の特徴的な動き、成長のうち、下記はわれわれの観察、形態計測により記載の追加、修正、変更が必要であった。脳の拡大13、外耳の上方移動3、外耳・内耳の位置関係26、眼球の位置変化29、胃の回転8、腎臓の高さ・向きの変化37、中腸の回転19、肩甲骨の下降45、上下肢の肢位の変化55等。空間的位置の数値化により、動きの多くはdifferential growth(組織の成長差)に基づくものであることを裏付けた。
2胚子期の標準像、形態形成時期の特定、精度向上
ヒト胚子期発生段階(Carnegie stage)を採用し、各段階での標準像と大きさ、特徴的な形態形成の時期を明確に示した。脳関連2,6,13,23,25,33,41,51、聴覚器17,21,26、消化管と派生器官8,19,22、肝臓1、腎臓34,37,49、気管支と軟骨44,48,54、心筋46、脾臓11、骨格8,28,36,39,55.等の形成があげられる。
B 既存モデルの再検討と新規モデルを提唱
1)肋骨の胚子期形態形成は限られた少数の因子によって制御されるモデル(parsimonious model)を主成分分析を用いて示した40。
2)消化管生理的臍帯ヘルニアの脱出の肝臓の関与を否定する標本を複数報告した38.
腹腔内への消化管移動機序について腹壁上昇による還納の可能性を形態計測学的検討を用いて示し、wrapping modelを提唱した35。
移動時に腸間膜動脈の血流を安全に保つ合理性を組織観察で示し、slide-stack説を否定した56.
3)胚子期末の重要なイベントである2次口蓋形成直前の下顎(メッケル軟骨)・舌の重要な形態変化を、主成分分析を用いて「approach期」として抽出した57。
4)心筋走行を従来より2ヶ月程度若い個体で検出した。が胚子期後期から成人同様の走行がみられること、心筋バンド説は否定的であることをDTIを用いて示した46。
5)中枢部の25気管支(葉気管支、区域気管支、亜区域気管支)形成は左上葉気管支から分岐する舌状気管支を除いて側方分岐によることを気管支枝長の数値データに基づいて示した48。
6)腎臓糸球体の尿路樹への結合と分岐形態の関係についてに数値データを合理的に説明できるモデルを提唱した49。
C 胎児期初期の新たな知見
胎児期の脳関連10,27,50、聴覚器31,32、消化器10,35,42,56、肝臓5、運動器系8,28,36,39,47,55等の形態形成像の提示、定量化を行った。
D 膝関節の形成(青山・谷間先生と共同)実験動物を用いた検討を含む