胚内体腔の形成
胚内体腔は側板中胚葉の細胞間隙より形成される。胎生第3週末(CS8-9)に側板中胚葉は、羊膜を覆う中胚葉に続く壁側中胚葉層と、卵黄嚢を覆う中胚葉に続く臓側中胚葉層に分けられる3,17(図3)。これら両層は新しく生じた胚内体腔を取り囲む。体の側壁と体壁は、壁側中胚葉とこれを覆う外胚葉から形成される。また、胚内体腔に面している壁側中胚葉は中皮膜あるいは漿膜(壁側板)を形成し、腹膜腔、胸膜腔、心膜腔を取り囲む。臓側中胚葉と胚内内胚葉が消化管壁を形成する。臓側中胚葉層の細胞は腹腔臓器や肺、心臓を覆う漿膜の臓側板を形成する。臓側板と壁側板は背側腸間膜でつながっており、背側腸間膜によって、前腸の尾方端から後腸までの消化管は体の体壁から吊り下げられている。
腹側腸間膜は横中隔に由来し、食道の終末部、胃、および十二指腸上部のみに存在する。
胸腔、腹腔の分離と横隔膜の形成
横隔膜は1)横中隔、2)胸腹膜、3)食道の背側間膜、4)体壁の筋要素から形成される3,17(図4)。
横中隔は胸腔と腹腔を完全に分離せず、心腹膜管という開口部を残す。心腹膜管は、胸腹膜が背側から腹側に向かって伸びて、横中隔と食道間膜と癒合することで閉じられる。
この癒合は胎生第7週頃(CS17)までに完了する。心腹膜管を閉鎖する胸腹膜の形成不全が先天性横隔膜ヘルニア最大の原因とされている。体壁の間葉に比較して、胸膜腔がさらに拡張していくため、胸腹膜に体壁縁が加わる。この体壁縁が加わることで、体壁由来の筋芽細胞が胸腹膜に進入して、横隔膜の筋性部を形成する。
横中隔は、胎生第4週中(CS10-13)では頸体節の高さにあるが、その後、胎生第6週(CS16)の形成途中の横隔膜は胸体節の高さにある。この高さが変化する原因は、胚子の腹側部の発育に比べて、背側部(脊柱)の発育のほうが早いため、とされている。
胸腔は胸心膜により、心膜腔と肺を入れる胸膜腔の2つに分割される。
胸壁・腹壁筋の形成
胸壁・腹壁を構成する筋の前駆細胞は、体節背外側から遊走して形成される胸部下分節に存在する19,20(図6)。胸部下分節の筋芽細胞は、胸部では外肋間筋、内肋間筋、および最内肋間筋(または胸横筋)となり、腹部でも同様に、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の3層を形成する。また、腹壁縦走筋柱が下分節の下端から生じ、腹直筋が形成される(図7)。腹直筋は、成長に伴い臍輪を取り囲むように、側方から正中に移動するように形成が進み、胎児期初期に恥骨結合に到達する。